2012-01-01から1年間の記事一覧

「人はいかに学ぶか」

伝統的な学習感を排し、「もうひとつの」学習観をとく。 「もうひとつの学習観では、伝統的な学習観と対照的に、専門家としての教えてから意図的、意識的に知識を伝達されなくても、人は効果的に学ぶことができる、と考える」(18p) 1989年の出版で、「新…

「教育改革の幻想」

この本は、「ゆとり教育」に反対した苅谷氏の論点がよくわかる本である。 この本で教えられた点がいくつかある。 1. 戦前の日本は「教師中心」の教育だったが、日本でも戦後すぐのころは、アメリカ流の「子ども中心主義」の教育があったこと。それが1950年…

「学力低下論争」「学ぶ意欲とスキルを育てる」

これまで、認知心理学の知見をもとに、いわゆる「内発的動機付け」を大事にして、「スキーマ」と新しい発見を頭の中で再構築していく「学習」の大事さを理解してきたつもりだった。そして、日本の教育政策も、その方向で動いているはずだと思ってきた。でも…

ドラゴン桜公式副読本「40歳の教科書」

少し前に読んだ本だが、強烈なインパクトがある。 4つのテーマについて、「論客」がズバリと問題点を指摘している。 中でも、鳥飼久美子氏の英語早期教育への提言(変えるべきは「学校」より「親の意識」)はすばらしい。中見出しだけ列挙すると ・英語の早…

「学ぶ意欲の心理学」

市川先生の著作で特に学ぶ意欲についてまとめて述べた本です。 動機付けについて、心理学の考え方の整理と、精神科医・和田秀樹氏、教育社会学者・苅谷剛彦氏との討論が収録されています。 この討論という手法は実に有効で、意見の違う人との話の中で、違う…

「間違いだらけの学習論」

これまで読んできた市川氏、秋田氏、麻柄氏といった認知心理学に基づく教育実践に携わっている方々が引用している本です。1994年の発行ですが、今でも売られています。 著者の主張ははっきりしていて、認知構造に働きかけながら理解する過程こそが大切で、そ…

ドラゴン桜 なんとなく学園ドラマ風に・・

小説ドラゴン桜も3冊目に入った。 特進クラスの女子生徒が恋をして・・高校の再建計画が債権者の同意を得られるかがギリギリの局面に・・・かなり学園ドラマっぽくなってきた。 その中で、キラリと光る問いかけ(国語のカリスマ芥山が数学の高原に聞く) 「…

小説ドラゴン桜の科学的視点

ドラゴン桜は、東大受験テクニックで話題になったようだが、学習についての科学的視点も確かなものがある。 国語の授業で、芥山先生が、正しく読むためにどうしたらいいか、解説している。そこには、「スキーマ」「文脈」という用語も登場し、 「人が文章を…

岩波ジュニア新書「勉強法が変わる本」

市川先生の「心理学から学習をみなおす」の姉妹編。 こちらのほうがより実際に中学生、高校生が目にする数学の公式や小論文の書き方にもページを割いていて”実践編”という感じだ。 認知心理学が、20世紀後半からメジャーになり、行動主義の刺激-反応理論にと…

岩波高校生セミナー「心理学から学習をみなおす」

認知心理学の立場から、物を記憶する、理解するとはどういうことなのかをわかりやすく解説した本です。セミナーで高校生相手に話した内容がもとになっているので、どんどん読めてしまいます。 構造を理解して長期記憶に入れたほうが覚えやすい、文章を読む時…

岩波新書「創氏改名」

創氏改名は、日本の植民地支配の本質を見事に表している。 朝鮮半島での姓は、単なるlast nameではない。父系の血族のつながりを示すものだ。そのつながりを断ち切り、日本と同じイエという単位を新たに創設し、皇民化政策を推し進めた象徴のようなものであ…

「日本語を教えるための第二言語習得論入門」

第二言語習得論を学ぶと必ずクラツェンの5つの仮説を習います。 そして、その中に、「自然順序仮説」というのがあり、言語には習得できる「普遍的な」順序が存在する、というのが出てきます。 そういうのを読むと、じゃ、日本語を教えるのに(学ぶのに)も…

「じょうずな勉強法」

「読む心・書く心」と同じ「心理学ジュニアライブラリ」の一冊。 この本も、専門用語はなるべく使わずに、心理学の研究成果をわかりやすく伝えようとしている。 有意味学習と機械的学習、知識を結びつけることが大切、学習観(考える過程が重要)の大切さ・…

「読む心・書く心 文章の心理学入門」

読解の指導はどうあるべきか、と悩み続けてたどり着いたのがこの一冊。 文章を読んでわかるとはどういうことか? その過程で、心の中はどういうふうに働いているのか? この仕組みについて、中学生にもわかるようにわかりやすく解説しているのがこの本です。…

小説ドラゴン桜の語る教育論

マンガは読んだことがないが、小説ドラゴン桜には、「教育」という点で核心に迫る記述がたくさんあると思う。いくつか、メモしてみる。 「人は目標がなければ漂流する。なぜなら、人生とは日常の積み重ねだからだ。目標がなければ日常に埋没し、押し寄せてく…

日本語教育に生かす第二言語習得研究

「日本語教育に生かす」と書いてあるので、日本語教育に踏み込んだ内容となっているのかと期待して借りて読んだが、執筆が2001年と古いこともあり、結論としては、日本語教育の分野ではこの分野の研究はまだ始まったばかりで今後の研究が待たれる、というこ…

外国語学習に成功する人、しない人

副題は、「第二言語習得論への招待」である。 第二言語習得研究は、実はまだまだ分からないところが多い研究分野だ。 本書では、「日本人はなぜ英語が下手なのか」ということから始まり、執筆時点(2004年)での研究の到達点をわかりやすく紹介している。ク…

パトリシア・コーンウェル「神の手」

結末は、想像を絶する展開。というか、こういう世界があることを知らない人には想像不可能な筋書き。 訳者あとがきで、相原さんが犯罪者の心理描写をより丁寧におこなうために、1人称から三人称に変わったのではないか、というようなことを述べている。そう…

ノルウェイの森

村上春樹がノーベル文学賞を取りそうだと評判になっていたので(理由はそれだけ)、読んでみた。ああ、青春だなあ・・大学生の頃っていろいろなことで悶々としてたなあ・・とノスタルジアに浸ってみたものの、読み終わって、「なんでそんなに売れているんだ…

パトリシア・コーンウェル「痕跡」

久しぶりに、コーンウェルの検視官スカーペッタ作品を読んだ。もう8年も遠ざかっていたことになる。これ以前のものは、毎年、出るのを楽しみにして出るとすぐに買って読んでいた。 このへんの作品をアマゾンで探してみると、レビューに酷評がずらずらと出て…

文法の勉強のために

この本は、24週文法ツアーと称して、少しずつ日本語の文法を学べるようになっています。 最初に、文の組み立てを建物に例えて、「選んだ」のような「述語」を柱とする、柱に具体的な記述を加えていくために、壁にあたる「誰が」「何かを」というような部品が…

近所の花です。

涼しくなったので、久しぶりに近所の花を撮ってきました。ナスもあります(*^_^*)

生協よ、おまえもか・・

今日の朝日新聞社会面に 「生協連、下請け圧迫 支払い金25億円を減額」 と報道されている。 日本生協連が下請け業者に支払う代金を不当に減額した、として公正取引委員会から勧告を受けたという内容だ。 この手の勧告、指導は、大手家電量販店などが受けたこ…

日本語教育に関連する本いろいろ

ヒューマン・アカデミーでの日本語教師養成講座の第1期がほぼ終了しました。このあと、10月28日にある検定試験対策の講座があるため、一般の授業はしばらく休みです。私は、来年の検定試験を受けるので、約6週間の充電期間に入ります。 これまで、授業と並…

リーダーズ英和辞典3版

リーダーズ英和辞典の3版が出た。13年ぶりの改訂だ。 ちょっとした辞書の改定とはわけが違う。28万語もの収録項目数を誇る辞書の改訂である。 辞書の電子化がすすみ、どれくらい売れれば採算が取れるのかよくわからないが、こういう専門用途の辞書の改…

限界集落株式会社

この本は、3つの再生物語だ。 1 主人公の元エリート銀行員がド田舎の人々と新しい事業を進める中で失っていた人間性を取り戻す 2 限界集落と呼ばれいずれ消え去る運命と思われていた村が農業で再生する 3 限界集落でも失われつつあった「絆」が復活する …

敬語再入門

今通っている講座の中の1テーマに「敬語」があり、日ごろ、敬語の使い方に慣れていない引け目を感じている私は、すがる思いでこの本を手に取りました。 実は、2007年に文化審議会から「敬語の指針」という文書も出され、これまでの3分類から5分類へと…

文章は接続詞で決まる

今まで文章を読む時に、接続詞について深く考えることはなかった。 本書の序章では、 「プロの作家は接続詞から考えます。接続詞が、読者の理解や印象にとくに強い影響を及ぼすことを経験的に知っているからです」 と述べられている。 う〜〜ん、そうか・・ …

日本語論理トレーニング

小論文などで、論理的にものごとを表現しようとするとき、そういう訓練をしていないと、なかなかできない。日本の学校教育で論理トレーニングが放棄されていることを著者は指摘している。 あまり肩がこらない程度で、しかも丸山真男などの文章が例文に出てき…

私たちの教室からは米軍基地が見えます

普天間基地の県外移設、辺野古へ、日米合意の実行・・民主党政権が誕生して以来、よく聞いた言葉だ。でも、これらの言葉の本質をわかっている日本人はどれほどいるのだろうか?この本の表紙には、校庭でサッカーをしている子どもたちのすぐ真上を戦闘機が飛…