「間違いだらけの学習論」

これまで読んできた市川氏、秋田氏、麻柄氏といった認知心理学に基づく教育実践に携わっている方々が引用している本です。1994年の発行ですが、今でも売られています。
著者の主張ははっきりしていて、認知構造に働きかけながら理解する過程こそが大切で、そこを見ないで断片的に知識を覚えこませようとする「受験」勉強の弊害に、覚える断片的な知識の量を減らすことで対応するのがいわゆる「ゆとり教育」だ。そうではなくて、断片的な知識を有機的に結び付ける知識をきちんと持たせるべきで、それは教科書を薄くすることでは達成できない。教えている「知識」の内容そのものを問い直すべきだ。ざっとこんな感じでしょうか?
西林氏は、教育における教師の役割にも言及していて、これは学校教育のみならず、日本語を教える現場にも当てはまるものだと思います。
教育内容に「何」と「なに」の2つのレベルを設けて区別する、など参考になりますし、単純に学習者が参加する形の活動をやればいいというものではない、というのもうなずけます。「学び続ける教師」という言葉も出てきます。
以下、引用です。
学習者には学習者なりの認知構造があると考えた方が事態をよく説明できます。認知構造によく合うものは簡単に学習できるのですが、それに合わないものは、そもそも受けつけられないか、もしくは既存の認知構造と関連づけられないままに一時的に機械的に暗記する形で学習し、テストなどの必要がなくなるとすっかり忘れてしまうのです。
引用はここまで。
この部分は第二言語の習得過程でも応用できる内容ではないか。それは別としても、なぜ丸暗記の試験勉強が必要になるのかを見事に指摘しています。
本の学校教育が方向性を見定められずにいる中、本書はしっかりとした指針を示しているような気がします。多くの教育関係者、親に読まれるべき本だと思います。

間違いだらけの学習論―なぜ勉強が身につかないか

間違いだらけの学習論―なぜ勉強が身につかないか