日本語教育に関連する本いろいろ

ヒューマン・アカデミーでの日本語教師養成講座の第1期がほぼ終了しました。このあと、10月28日にある検定試験対策の講座があるため、一般の授業はしばらく休みです。私は、来年の検定試験を受けるので、約6週間の充電期間に入ります。
これまで、授業と並行していくつか書籍を読んでみましたので、紹介します。これから日本語を教えてみようかと思っている方の参考になればと思っています。
授業に入る前に読んだものとして

日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50

日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50

この本は、検定試験にどんなことが出るのかを概観したものです。あくまでこんなことが出るという事柄が書いてあるだけで、細かい記述はありません。これから養成講座を受講される方は、講座そのものが検定対策になりますので、必要ないと思います。一方で、独学で検定に臨まれる方にはいい資料になります。検定試験の内容について、もっと細かく記述してあるものが欲しいという方向けには、こちらが役に立ちます。私も全部読んでいませんが、かなり詳しいし、聴解用のCDもついているし、確認問題や練習問題も豊富で、また、参考文献も数多く紹介されているので、コストパフォーマンスはけっこういいと思います。日本語を教えるというのはどういうことか、がよくわかる本として東京外国語大学の荒川先生が書かれているこの本は、おすすめ度NO1です。まったく経験のない3人が突然、日本語を教えることになって・・物語風なので、読んでいて抵抗がなく、その実況中継に関連して、教えるポイントがうまく整理されています。興味あるけど、検定試験なんてハードルが高そう、という方にもぜひ読んでほしい本です。なお、この本は、電子書籍でも出されています。同じ荒川先生の手によるこちらは、実際に教えるときに出てくる、疑問に答える形になっています。まあ、これは、実際に教える立場になってから読んでも遅くないでしょう。この本は、アルクのサイトがもとになっています。↓
http://www.alc.co.jp/jpn/teacher/tsubo/
さて、養成講座を受けている方にぜひともお勧めしたいのがこちらです。タイトルは日本語教師のための・・となっていますが、養成講座の中で模擬授業とか教育実習とかがあると思いますので、その前に、あるいはそれと並行して読むといいと思います。最近は、日本語の教え方についてもノウハウを紹介したような本があって、そのとおりにすればうまくいくような錯覚に陥りやすいのですが、この本では30のテーマに沿って、「教えるとはどういうことか」を考えるポイントを提示してくれています。ヒューマンでは、7月からの2か月で「初級指導法」の講義で6回ほど模擬授業をやりました。「こう教えなさい」という模範はなく、自分で考えてやってみるという講義でした。たったそれだけの経験ですが、それでも、この本は「あなたは日本語を教えるということに対してどういう姿勢で臨んでいますか?」という問いを突き付けてくる内容です。
日本語教師のための「授業力」を磨く30のテーマ。

日本語教師のための「授業力」を磨く30のテーマ。

辞書として貴重なのが、「基礎日本語辞典」です。いちばん本質的でかつ意味がわかりにくい基本の和語について、これでもか、というくらい詳しく説明してあります。たとえば、「余る」をひくと、「残る」との違いがよくわかります。
基礎日本語辞典

基礎日本語辞典

おなじく、ことばの意味をどうとらえるかという点で参考になるのが、こちらです。
ことばの意味―辞書に書いてないこと (平凡社ライブラリー)

ことばの意味―辞書に書いてないこと (平凡社ライブラリー)

1から3まであります。4名の言葉の専門家が似たような意味を持つ言葉の意味の違いを突き詰めて考える過程が述べられています。3冊に分かれているのと、詳しい議論の過程が記述されているので手っ取り早く意味を知りたいという辞書的な使い方には向きません。しかし、類義語の比較を通じて言葉の本質に迫る方法論はおおいに参考になります。
次の「理想の国語辞典」は、「ことばの意味」の執筆者のひとりである著者が、現行の国語辞典の記述について検討し、もし、作るなら、こんな辞書がほしいという提案を一部の語についてまとめたものです。世にすぐれた国語辞典はたくさんありますが、英語の辞書などと比べてまだまだ立ち遅れた部分が残されていることがよくわかります。
理想の国語辞典

理想の国語辞典

言語学関連の参考書としては、この本がわかりやすいようです。ただ、養成講座に通う方は、言語学の講義でほぼこの本と同じような内容をやるので、必要ないと思います。
よくわかる言語学入門―解説と演習 (日本語教師トレーニングマニュアル)

よくわかる言語学入門―解説と演習 (日本語教師トレーニングマニュアル)

あと、もう絶版のようですが、この本は、「ことば」について考えるいいきっかけを与えてくれます。いい意味で知的刺激が得られます。
ことば (あたらしい教科書 3)

ことば (あたらしい教科書 3)

日本語の歴史について知るための一冊。まあ、知っておいて損はないかなという程度ですが。
日本語の歴史 (岩波新書)

日本語の歴史 (岩波新書)

とりあえず、こんなところで。また、勉強が進んだら、紹介します。