「出版大崩壊」

2010年は「電子書籍元年」と呼ばれたが、今年になっても誰もがみんな電子書籍を読んでいる様子はない。そのなぜ?に答えてくれるのが本書である。著者は光文社で34年間仕事をしてきた方で内部事情に詳しい。
要は、電子書籍というもののイメージが未だはっきりせず、乱立する電子書店が3万点くらいの品揃えでは選ぶ楽しみがなく、ハードも普及しない。アマゾン、グーグルの70万点、120万点くらいの品揃えがなくては普及しない。また、ただ紙の本を電子に置き換えるだけでなく音声や動画も付けるリッチコンテンツの場合、もはや書籍ではなく、あらたなビジネスモデルの構築が必要である。日本で電子書籍がいちばん普及している分野は、ケータイのアダルト系やそれに近い少女恋愛コミックなどで、純文学などはほんのわずか。ネット上ではコンテンツはタダが当たり前。だから、課金しようとすると読者が逃げていく。本格的に電子出版が普及すれば、編集などの出版社の役割は小さくなり、大幅なリストラが進む。また、出版社の利益構造も大きく変化せざるを得ない。
まあ、こんなことが書いてあります。ただし、紙から電子への流れは止められない、CDが売れなくなって音楽のダウンロード販売が主流になったように、電子書籍が普及していく流れは止められない。そこに待ち受けているのはバラ色の世界ではなく、出版社も淘汰され、自費出版が自由になり、多くのゴミの中で本来読まれるべき手間暇かけた労作がうずもれてしまう、そんな世界。

電子書籍ねえ・・Kindleを輸入したはいいけれど、今のところの結論は紙の方が読みやすい。ペーパーバックだったら紙の本の方が安い。アマゾンが日本に進出してきたら話は違うのだろうけど。私としては、ネィティブの音声付、動画付きの英字新聞とかあったら買いたいなと思うけど、そんなものが文字と写真だけの新聞より安かったら、新聞社はつぶれるだろうな・・・と考えてしまう。
あと、アメリカではたとえばアマゾンの売り上げで電子が紙を抜いたとか、話題になっているが、実は全体ではまだ電子書籍の割合は1割程度。センセーショナルな報道にあおられている感が強い。

出版大崩壊 (文春新書)

出版大崩壊 (文春新書)