ようこそ、わが家へ

駅のホームで割り込みを注意した男からの嫌がらせ行為の連続、そして、会社では営業部長の不正の疑惑。この二つが同時に進行していき、主人公はなんとかしないといけない立場に追い込まれる。最終的には解決に向かうのだが、その過程はなかなか読ませるものだ。主人公、倉田太一は半沢直樹のような切れる男ではない。真面目だけがとりえで他人に強く言うこともできない性格である。その倉田が事件を解決していくのだから、親近感を覚える。家族や信頼できる部下の応援も心強い。
村上貴史氏による解説がおもしろい。池井戸潤の作品をVersion1とVersion2に分けて(『シャイロックの子供たち』が分岐点になる)、この作品は両方の要素を併せ持っているとしている。なるほどな、と思う。