”ようこそ”と言える日本へ

『入管戦記』は不法に日本に滞在し日本で犯罪を犯す外国人を摘発する話を描いている。一方でこの本は、同じ入管の、難民認定をしない姿や不法滞在外国人への情け容赦のない摘発、締め出しの実態を描いている。
この本のテーマは、一言でいえば「難民鎖国」日本。他の「先進」諸国が人道的な立場から難民を受け入れているのに対し、日本は極端にその数が少ない。平成23年のデータでは23人で、アメリカなどと比べると2ケタ違う。また、難民の認定を求めて日本にやってきた人々の一部を、申請中の身であるにかかわらず「収容所」に収監し、自由を奪ってしまう、そんなやり方が暴露されている。
難民の認定は法務大臣(結局は入国管理局)の采配によって決まってしまい、明確な基準は示されていないという。
もう一点、提示しているのが「不法滞在」外国人の問題だ。『入管戦記』では、不法滞在=犯罪組織の温床という図式で摘発対象と見ている。だが、著者は、弁護士としての活動経験から、「不法滞在」の人々は多くはやむを得ず不法と知りながら日本で暮らしているのであって、「不法即摘発、送還」というのは、彼らの人権を無視したやり方だというのが主張のようだ。また、今の日本が、異質な人間を締め出す「純血」主義=戦争に突き進んだ当時の状況に似てきているのではないかと警告を鳴らす。
「不法」滞在者のどれくらいが犯罪組織に利用されているのか、どれくらいの「不法」滞在者が初めから違法を知りつつ上陸して滞在しているのか、やむを得ない理由で「不法」滞在になってしまった人がどれくらいいるのか、統計にはなっていないので、よくわからない。だが、「人手不足」を理由に特に3K職場でいいように「不法」滞在外国人を利用してきた日本に、「不法」滞在、即アウトという資格があるのか、考えさせられる。新しい入管法が昨年7月に施行されて、外国人登録が廃止され、在留カードに一元管理されることになった。移行措置が終わる2015年には、「不法」滞在者の子どもは学校に行けなくなるのだろうか?
これからの人口減少社会日本では、外国人の手を借りずして社会を回していくこと自体が不可能になるのではないか。だとしたら、ここで提起されているような問題を多くの日本人が知る必要があるという点は否定できないだろう。

ようこそ

ようこそ"と言える日本へ" 弁護士として外国人とともに歩む