「常識」にとらわれずに自分の頭で考えるためにはどうしたらいいのか、がこの本のテーマです。
そして、読むこと、書くこと、問うことをとおして実際にどうするのか、というヒントを示してくれています。
本書で示している考え方は、まっとうな考え方です。でも、実際に自分ができているかと問われれば、なかなかできていない、おそらく多くの人がそうではないでしょうか。なぜなら、そういう教育を受けたことがないからです。
私自身で一番感じたのは、自分の中にある「活字信頼症候群」のようなものです。自分で勝手に名づけました。本書では、活字になった本の中の文章も、試行錯誤の末生まれたもの、そしてまだ変更がありうるものだと考えるべきだと述べています。そうしてこそ初めて著者と対等な立場で読める、と。もっともな指摘です。活字になっている本の内容を無条件で信じてはいけない。どういう立場で誰に向けて書いているのか、何をもとに言っているのか、基になるデータは信頼できるのか、論理の展開に飛躍はないのか、別の立場で見た場合どう考えられるのか、どこまでが事実でどこからが意見なのか、「暗黙の前提」になっていることはないか、などなど・・
このような思考法は、一朝一夕に身につくものではありません。この本を読んだからと言ってできるわけではない。できればコーチをそばにおいてトレーニングしてほしい。でも、それも無理な話。まずは「常識」を鵜呑みにしない、ということから始めましょうか?あとは、別の立場から見たらこんな考えができるかも、と立ち止まってみるとか、「なぜ、それが問題なのか」という問いを立てる、あるいは「そのことで誰が得をするのか」という視点で眺めてみる、とか、手がかりはありそうです。
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/20
- メディア: 文庫
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