ジャパン・タイムズのコラムをまとめたこの本は、日本語を使う日本人の意識を探るという点で非常に興味深い。たとえば、午後2時に出社したときに、あいさつとして「こんにちは」を使うかどうか?普通は使わない。私だったら、2時でも「おはようございます」を使う。あるいは「今日は遅くなりました」などというだろう。
「おはようございます」が誰にでもどんな間柄の人に対してでも使えるのに対し、「こんにちは」「こんばんは」は、自分と同じ集団に属する人には使わない。だから、家族、同僚には使わない。つまり、「こんにちは」は昼間の時間のあいさつ、という理解だけでは使いこなせないのだ。
それから、「こんなことを言ってはなんですが」という表現。以前から辞書にも出ていないし、どういう意味なのか正確にはわからなかった。これは、「これは言うべきではないのだが」の意味で、思い切って人の批判をする時の前置きとして用いられる。あつかましい、あるいは筋違いと思われる依頼を持ち込む時には、「こんなことをお願いしてはなんですが」と言う、と説明されていて、なるほどと思った。
言葉は、使う人の持つ文化を色濃く反映する。そのことをあらためて認識させてくれるコラム集だ。
Nihongo Notes vol. 1 Language and Culture
- 作者: 水谷修,水谷信子
- 出版社/メーカー: ジャパンタイムズ
- 発売日: 2011/01/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (1件) を見る