「言語学の教室」

認知言語学の入門書です。でも、入門書といっても、かなり本質的な部分に迫っていると思います。
難しいので、内容をまとめるなどとてもできませんが・・
メトノミーをただ隣接性ととらえるのではなく、ある言葉の引き出す「フレーム」の別の側面を焦点化したものととらえる。たとえば、電話だったら電話のフレームのなかにある「電話が鳴る」「電話をとる」という二つの言い方がメトニミーの関係にある、という考え方などは、わかりやすい?いや、わかりにくいかもしれない。だって、普通の解釈では、「電話機をとるのじゃなくて、電話機の受話器の部分をとる、だからメトニミー」となるのだから。
あと、迷惑受け身(自動詞の受け身)も、「雨に降られた」の場合、「雨が降る」に関連するフレーム(さまざまな事実)が呼び出されて、その中の「傘を持っていなくて雨に濡れて困った」という側面に焦点を当てるとこういう表現になると説明されています。この側面を言語化するかしないかは、言語によって違う、と。(ここでは、「構文」--能動態・受動態--もメトニミーの関係にあると分析されます)
あと、最終章では、言葉は本来、ゆらいでいるものだ、ということをズバッと指摘しています。メタファーの「創造性」に着目した部分ですが、生成文法でいう固定化した規則の中からは創造的なメタファーは生まれない。その規則からはずれたところに新しいメタファーが生まれる、というような理解でいいのかな?
というわけで、ずいぶんと示唆にとんだ本です。