ヴィヨンの妻

「Jブンガク」で紹介された太宰治の名作短編です。
太宰というと「人間失格」から思い浮かぶちょっと暗いイメージがありますが、この作品はとても軽妙な語り口です。主人公の女性の一人称で書かれています。
この作品の特徴を一言で言い表すとすると、最後の主人公の台詞
人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」
です。
主人公の佐知は、夫の借金の肩代わりをするために飲み屋で働き、人気者になる。そして時々訪ねてくる夫と会えるのが楽しみで仕方ない。今の時代だったら即、離婚ものですが、佐知は道楽ばかりしている放蕩男でも、生きていればいいと言い切る。

「Jブンガク」で杏さんは「大谷にとっての佐知のように、一見わかりあっていないようでも、共感もしなくていいから、ただ揺るがない存在でいてくれるというのは、お互いが必要としている要素なのではないかと思いました。」と語っています。よくわかります。こんな夫婦の形も「あり」かなと思います。

ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

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