「ことばから誤解が生まれる」

この本の著者に見覚えがあった。NHKみんなでにほんGO!のご意見番として出演していた人だった。その時は辞書編纂者と紹介されていたが、三省堂国語辞典編集委員でかつ、大学で教鞭をとっているという。
この本は、副題に「伝わらない日本語」見本帳とあるように、こういう要因で誤解が生まれるという例を豊富に紹介している。
音声から生まれる誤解
文法から生まれる誤解
語義から生まれる誤解
状況から生まれる誤解
表現意図から生まれる誤解
そして、ことばから誤解が生まれることは、完全には避けられない、としている。
かといって、沈黙していても誤解は起こる。なら、簡単なあいさつや決まり文句からでもいいから会話を初めて相手との間に信頼関係を作っていこう。というのが結論である。

新書でわかりやすく書いたという制限があったには違いないが、やや物足りなさが残る。前半の特に文法に関する記述あたりをもう少し詳しくしてほしかった。
結局はことばは人間関係によってわかりやすくなったり誤解されたりするものだ、ということでまとめられてしまっては、できるだけ正確な言葉遣いを目指そうと日々気を付けている人には不満が残るだろう。まあ、それでも、ここにある見本帳を参考にすれば、ある程度、誤解を避ける書き方を身につけることはできる。