下町ロケット

以前ドラマを見たことがあって、結末は知っていたのだが、それでもどう展開していくんだろう、とハラハラしながら読み進めた。社長の方針についていけないとバラバラだった佃製作所の社員たちの心が、大企業の「いじめ」にあい、自分たちのプライドを傷つけられそうになって、一つになっていく。その描写は感動的だ。
「悪者」として、帝国重工という巨大企業が登場する。社員たちはいわゆる「嫌なヤツ」として描かれる。だが、そんな中でも佃を正当に評価しようとする「良心」のような人物も登場する。そして佃製作所の社員たちの中にも、「夢よりも金」というような価値観をもっているものもいる。そのへんが、単なる「勧善懲悪」の図式でなく現実味をもって読ませる要因だ。
直木賞受賞作という看板に偽りなし、というところか。

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)