「バイリンガル教育の方法」

バイリンガルというと、英日バイリンガルのようなステータスの高いバイリンガルをまず思い浮かべる。英日バイリンガルが子どものころに苦労して2言語を習得したことは否定しないが、結果としてプラスに働いている場合が多い。しかし、身近なところで、ブラジルやペルーなどから親に連れられて来日し、言葉のまったくわからない中、日本の小学校などに放り込まれている場合は、いっそうの困難が予想される。日本語に比べて母語のステータスがあまりに低いから母語の維持が難しくなる。
著者は、バイリンガルを育てるうえで欠かせないのは、認知・学習ができるくらいに母語を十分に発達させることだという。母語が不十分なまま第2言語の中に放り込まれるとどちらも十分に発達せずに「リミテッド・バイリンガル」の状況に陥る。これは8歳くらいで第2言語の世界に入るより、12歳くらいで入った場合のほうが両言語の発達が速いとのデータで裏付けられる。また、子どもの場合、母語であっても、使わなければ急速に衰えていく、という事実はもっと知られたほうがいい。
では、認知・学習言語が発達しない段階で、第2言語の世界に放り込まれた子どもたちにはどう対処したらいいのか。これは正解はない。親が母語で十分なケアができるか?母語で学習する機会(週末学校など)があるか?母語で話せる友達がいるか?これらの条件がない場合は、第2言語(日本だったら日本語)で認知・学習言語を発達させるしかない。だが、この場合は、子どもの母語、母文化を日本語で塗り替えることだと自覚する必要がある。気楽に「日本語を教えてあげるよ」とは言えない。では、母語はどうするのか、ということとセットで考えなければならない。

バイリンガル教育の方法―12歳までに親と教師ができること

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