「陰陽屋へようこそ」

ある人からの紹介で、読んでみた(紹介されなければ絶対に手に取ることのない分野の本である)。
この本、変だ。なんで中学3年生の男の子と母親がこんなに仲良しなんだ?ありえないだろう!とか思いながら読み進めたが、けっこうおもしろかった。物語の舞台は王子。怪しげな陰陽屋という占いやお祓いをするお店を舞台に、陰陽師そのものの格好をした男とそこでアルバイトをすることになった冒頭で紹介した男の子が活躍する。陰陽屋には様々な相談事が持ち込まれ、解決される。そして、その中で、怪しげな男の出自や男の子の「正体」などが次第に明らかになる。そして最後はハッピーエンド。
著者は、愛だとか正義とか、宗教観だとか、そういう難しいテーマを持ち込まない。だから、肩が凝ることなく最後まで読める。東京都北区王子とか浦和とか、妙にローカルな地名も親近感を抱かせてくれる。
ところが、最後に、参考文献というページを見て、驚かされた。「王子稲荷神社社報」「新修北区史」「わかりやすい稲荷信仰」などが並ぶ。この本は、著者の想像の世界から生み出されたものではなく、丹念な調査・取材に基づくフィクションなのだ。きっとこの男の子のような話がこの地方では受け継がれているに違いない。

陰陽屋へようこそ

陰陽屋へようこそ